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たいらくなていたらく

頽落(たいらく)とは - 頽廃してしまった人間存在。堕落と言い換えてもよいだろう。ハイデガーの言葉。

好きな子のフルート浮かべて最上川

立ち読みしながらSpotifyしてたら、こんな出だしの曲がきた。

あの子の大事なフルートを 汚い小川に浮かべて
どこまでも見送るよ 沈んで見えなくなるまで*1

これは?!

ンッフッフ〜wwwワカルワア〜www

喜びと同時に、なんか言い当てられたような恥ずかしさ。

このクウチュウ戦の新譜は、好きすぎるせいでリアルタイムでチェックしてなかった。3年くらい寝かせるつもりだった。たまたま、なんとなく世の新たなサービスでランダム再生したら出てきたから聞いた。結果、無事陥落。雑誌しかないくまざわ書店で立ちつくす。

脳は陥落したけど歌は続く。

君の瞳はまるで 宝石みたいに嘘つき
騙されてあげてもいいけれど そうね
気分次第

リモコンで世界を 最初まで 巻き戻して
そしたら 仲良くなれる 君と僕

潔くエレガントな、「君」の拒絶だ。フルートを吹く君にどうしようもなく惹かれるけど、本当の君は嘘つきで偽物だから、気まぐれでしか付き合ってあげないよ。そういう事情がぜんぶなかったら、一緒に過ごせたかもね(さようなら)。

このお別れにとって余計な、騙されたいなあ、というエモい感情をひっそり小さくするためにに「あの子の大事なフルート」は「僕」の手によって世界の果てまで押しやられる。

 ☆☆☆

 あんまり歌詞そのものについては、分析しないことにしよ。理由は、この曲が好きすぎて恥ずかしいし何も言えないから、という正当なものである。代わりに、心に爆誕した「エモなんてぶっ壊せ」というフィーリングだけに注目したい。

まず、よく言うエモいってなに。今では、マイケミなどゴスと混同されがちなサブカルチャー(Emo)とは特に関係なく、

エモい

①物悲しい、寂しい様子。
②感情が高ぶっている様子。感動、感激したときに使う。*2

というような心境のことを指す。エモい感情を掻き立てるものとしては、人によってかなり違うらしいけど、まあ夕暮れの電線とかかな。覚えのないノスタルジー。不意に現れた、いまと過去の繋がり。一気にこの場へ流れ込む過去。感傷みたいなの。けどググってみたら、生牡蠣がエモい、という例があったのでわからなくなりました。すごいな他者は。ただ、ある人はエモい映画や音楽や風景(もしかしたら食べ物も)に接するのが好きだし、ある人はそうでない。私は、エモさをそんなに求めない。むしろ、そんな気持ちの高ぶりを察知すると、

A.B.Cを希求して1,2,3を撃破せよ

f:id:zazalion3:20170105153845j:plain

ぶむぶむぶむぶむぶむ*3

という感じになる。ダダイストのふりして、エモい何かが主張してきた一切の意味とか、心の動きとかを完全に否定し無かったことにしたくなる。それからAKIRAバイクレースとかもめちゃくちゃに思い出してかき消す。それがなんだってんだ、けっ!辛気くせえんだよ!シラケるぜ。

youtu.beこんな風に、悲しく恋しく心地よく揺さぶられるエモ愉快と、グッと胸に迫られたことにイラつき追い返すエモ不愉快がある。なんでかは、わかんない。

わかんないけど、エモ不愉快になりがち、つまりエモさが生じると同時に破壊したくなりがちな私がどうしても避けたいのは、エモさにとらわれることである。適度にエモさをエンジョイする自信のない私は、自分自身のエモい感情に酔っ払い、現実が見えなくなってしまうことが怖い。たぶん残された身体の方の表情も、情けない感じになってるし。だってAKIRAでも、ひとりで夢を見続けた鉄男は自滅してしまった(教訓)。

でも、まったくエモくならない、エモさを一切感じない生き方も難しい。

戦争も AIDSも

楽しむしかないのよ*4

このくらい鋼のメンタルにならないと。時間かかりそう。限りなく透明に近いブルーや、眼球譚の女の子くらい強い感じが求められる。ノルウェイの森の緑くらいがんばらないと。*5(ドウデモイイけど、村上春樹はとても好きなのにある種のハルキスト男子にはとてもイライラする理由も、このあたりに隠れてそう。)

エモが愉快でなく、かといって無視もできない場合は、どうすればいいの。それは、エモさに対する主導権を握っていくしかない。

できれば、こんな風に。

汽車

 

ぼくの詩のなかを
いつも汽車がはしってゆく

その汽車には たぶん
おまえが乗っているのだろう

でも
ぼくにはその汽車に乗ることができない

かなしみは
いつも外から
見送るものだ*6

 

汽車に乗ることのできない「ぼく」はきっとかなしいはずだ。
でも、彼はむやみに泣き叫んだり、かなしみにどっぷりと入り込んだりはしない。
「いつも外から見送るものだからね」とのんびりしている。*7

これは、前に友だちが教えてくれた、今日にぴったりの詩。あの子からフルートを奪って川に流すように、「かなしみ」を「ぼく」や「汽車」や「おまえ」から引きちぎって眺めてる。しかも「ぼく」は、エモい感情を破壊したり、川に流す・空に飛ばす・土に埋めるなどして遠くへやらないで、標本のように手に取って見つめる。虫眼鏡でのぞいたり、光にすかしたりして。これがぼくの感情かあ。いや、人の感情というものかあ。かなしみ、ね。これは、「いつも外から見送るものだ」ね。なるほど、なるほど(ちょっと胸が痛むかなあ)。

 え、かっこよ。変態博士みたい。

けど、エモ愉快にも鋼の女にも変態博士にもなれない私は、こっそり、クウチュウ戦と好きな(んて言ってない)子のフルート浮かべて最上川

*1:フルート - クウチュウ戦

*2:若者言葉辞典: http://bosesound.blog133.fc2.com/blog-entry-346.html

*3:『ダダ宣言』トリスタン・ツァラ

*4:HYPER DESIRE - DEAD END

*5:それぞれ、村上龍ジョルジュ・バタイユ村上春樹の小説。

*6:「汽車」寺山修司

*7:はい哲学科研究室です